みなさん、こんにちは。あきらです。
朝の光がカーテンを透かす頃、スマホの通知が鳴りました。退職代行サービス「モームリ」の社長夫妻が、弁護士法違反の疑いで逮捕されたというニュースです。報酬を得て退職の意思を伝える行為が「非弁行為」として裁かれる理由は、法の観点から理解できます。しかし、それ以上に心を刺すのは、このサービスが多くの女性にとって「最後の逃げ道」だったという事実です。
日本では今も、退職を口にすれば「裏切り者」「逃げ」と烙印を押される職場が少なくありません。特に非正規雇用や女性が多い現場では、パワハラ、セクハラ、長時間労働が常態化し、上司の顔色をうかがいながら「辞めます」と言うだけで息が詰まります。厚生労働省のデータを見ても、女性の離職理由の上位には「人間関係」「労働条件の悪さ」が並びますが、実際に声を上げられる人は少ないのです。
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そんな中、退職代行サービスが登場しました。2022年の開始以来、累計利用者は4万人を超え、ピーク時には1日100件以上の依頼があったそうです。利用者の多くは20〜30代の女性。「お局からのいじめ」「セクハラ上司と話したくない」「生理休暇すら取れない」といった切実な声が寄せられていました。
このサービスは、単なる便利屋ではありませんでした。利用者は、直接対峙する恐怖から解放され、初めて「自分の人生を自分で決められる」と感じたはずです。アーレントが語る「行動の自由」とは、他者との関係性の中でしか生まれません。職場という閉じた空間で対話が暴力に変わるとき、人は沈黙を選ぶしかありません。退職代行は、その沈黙を破るための第三者の声だったのです。
しかし、それが「弁護士でない者が法律事務を扱う」として摘発されました。法は守られなければなりません。非弁行為は司法の信頼を損ないます。それでも同時に問われるのは、法が守る「自由」と、現実が奪う「自由」のギャップです。
考えてみれば、現代の労働は「契約」ではなく「隷属」に近いものです。民法627条は「期間の定めのない雇用は、解約の申し入れから2週間で終了する」と定めています。理論上、退職は自由です。なのに、引き止め、脅し、孤立、無視が横行します。女性の場合、そこにジェンダーの層が重なります。育児・介護との両立を強いられ、昇進の道を閉ざされ、身体的な負担を強いられる。辞めたいと思っても「女だから甘い」「我慢が足りない」と責められるのです。
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こうした抑圧は、フーコーの言う「生政治」の一形態です。
個人の身体と生活が、企業の生産性や社会規範に管理され、逃げ場を失うのです。
逮捕のニュースは、サービスそのものを否定するものではありません。
むしろ、こうした「逃げ場」が必要とされる社会の歪みを露呈したのです。法が厳格に適用されるなら、労働組合や弁護士による正規の支援が拡充されなければなりません。しかし、現実はどうでしょうか。労働基準監督署の相談件数は増え続けていますが、是正勧告に至るケースは限定的です。女性の非正規雇用率は依然高く、パワハラ防止法が施行されてからも、相談を恐れて声を上げない人が多いのです。
私たちは「辞める自由」を持っているはずです。
なのに、なぜ辞められないのでしょうか?
それは、自由が「個人の意志」だけで成立しないからです。アーレントの言葉を借りれば、真の自由は「他者との共在」の中でしか生まれません。職場が他者を敵視する空間であれば、自由は窒息します。退職代行は、その共在を外部から強制的に作り出した試みでした。違法とされた行為は、実は社会の病巣を映す鏡だったのかもしれません。
逮捕された社長夫妻は、法の境界を越えた可能性があります。しかし、利用した女性たちは何を失うのでしょうか。次なる「逃げ道」はどこにあるのでしょうか。モームリの終わりは、新たな始まりを強いる問いでもあります。
あなたは、今の職場で「辞めます」と言えますか?
言えないなら、それはあなたの弱さではなく、社会があなたに課した鎖の重さです。その鎖を、誰が、いつ、どのように解くのか――。答えは、まだ私たちの手の中にあるのです。
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